
はままつフラワーパークにてこのような大きなモザイカルチャー作品をデザインさせていただきまして、昨日、完成式典が行われました。(あ、写真は昨日のものではありません。残念なことに雨でしたので)
モザイカルチャー(Mosaiculture)とは小さい状態の草花を、花や葉色、質感などその特性を活かしながらモザイク状に植込み、形を作り上げる立体造形物のことです。

今回のデザインは、人は自然に支えられ、様々な生き物と共に生きているという「自然との共生」を表現しています。7mの大きなくまがブランコの梁を持って支えていて、それを躍動感ある生き物たちが見守っているように取り囲んでいるという作品にしました。このブランコ(実際は安全上揺れません)は、自然に’支えられている’象徴ですので、ここに人が座り、仲間に加わることで作品として完成します。

生き物たちは昔から私たちの身近な野山で暮らしている日本の在来種をモチーフにしています。
施工中に作品を目にした来園者の方々からは、トナカイやアライグマといった名前も聞こえてきたりしましたが、実はしかとたぬきなんです。他もいちおうジョウビタキだったりニホンミツバチだったりします。

そしてなによりもこだわったのが躍動感です。活き活きと躍動する生き物たちの時を一瞬だけ止めたかのようにしたかったので、それぞれの生き物がもつ特徴的な肉感や仕草にこだわって細部まで検討しました。
制作や施工には色々なかたが関わってくださっていますが、写真やスケッチやら図面やら型紙やらを持って制作現場にも何度も足を運んで相談しています。

模様も生き物の形や空気感に沿うように描きました。
そしてもう一つこだわったことが、可愛いくてもゆるキャラや漫画っぽくならないように、そして活き活きしてもリアルすぎてしまわないように、ポップでアーティスティックなオブジェになるようにデザインすることでした。
モザイカルチャー以外の部分を、FRPなどで造形して具象的になることを避け、コルテン鋼という鋼材を使用したのもそのための演出のひとつです。以前から欧米で屋外のオブジェや建材、公園や街角のベンチやプランターなど様々な形で使われているのを目にし、その錆びた様子がとても自然の風景や植物に合っていて素敵でしたので、どうしても使いたかった素材でした。


これはサビが発生し、皮膜のようになることで己が腐食するのを防ぐという材料で、サビの質感をそのまま長期的に活かすことができ最終的には落ち着いた焦げ茶色になります。今回、加工していただいた鉄のプロでも初めての材料だったくらいあまり知られていない様ですが、日本でも公園などでもっと使ったらいいのにと思います。

モザイカルチャー単体というよりも全体で一つの風景になるように、かつ周りとのおさまりや見え方も効果的になるようにしています。後ろに木々が茂っているので、少し木を足すだけで森の雰囲気を出せました。園路沿いは彩りのためコスモスなどの一年草ですが、それ以外は自然な雰囲気を醸し出すような宿根草を中心に植えてあります。
と、とにかく隅々まで力を注いでようやく完成となった作品です。
デザインを考え始めてから約一年半弱、長かったようなあっという間だったような。これまでにいくつもモザイカルチャーをデザインさせていただきましたが、これは特に苦労しただけあって格別なものとなりました。
制作に携わった皆様お疲れ様でした、ありがとうございました。
来園者の皆さんに長く愛される作品になってくれたら嬉しいなと思います。
もしもこれを見た方で行ってみようかなという方がいたら、正面ばかりでなく後ろの園路からも見て見てくださいね。

どこから見ても楽しんでいただけるようにしてあります。